川崎市産業振興財団の企業マッチング事例に、当社と日本大学様との取り組みが紹介されました。その掲載内容の一部をご紹介いたします。

大学との共同研究いによる壁面緑化の高品質化

株式会社グリーニアンは、壁面緑化の計画から施工を一貫して請け負うとともに、布製の植木鉢に植えた植物を用いた移動可能な庭「コマニワ」の販売を行い、「都市部において、植物に触れる機会を増やす」ことを目的としている企業である。岡田陽介代表取締役社長が2016年に設立し、同年に弊財団の第101回「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場」にて「かわさき起業家賞」を受賞している。


■ 壁面緑化における課題
 壁面緑化において使用されるつる植物は、実はそのままでは設置後の暑さなどに耐えることが難しく、枯れないまでも生育が悪くなり、非常に見た目が悪くなってしまうことがある。そのため、「順化」と呼ばれる、音質などで育てた苗を植えつけ前に徐々に低温や強光に合わせ、環境の変化に耐えられうようにする処置を行う。しかしその際、それを行わない苗に比べ、通常3倍の時間コストが必要となる。
 一方、現在の建設業における業者選定の仕組みの中では、細かな部材に至るまで、最も安価なものが選ばれるという現状があり、せっかくコストをかけ順化した苗を用いて顧客満足度の高い施工を提案しても、適正な価格で販売することが難しいという課題があった。
 このような状況の中、もし順化を行ったものと非順化のものが明確に判断できる指標があれば、順化したモノを「順化済み苗」として適正な価格で販売することが可能となる上、施主や設計事務所も順化済み苗を選ぶことで当初のイメージ通りの美しい緑の状態を維持することが可能となる。そこで、岡田社長より弊財団に、産学連携にて本課題の解決ができないかとの相談が寄せられた。

・壁面緑化の施工例

■ 大澤先生との出会い
 早速、弊財団の産学連携コーディネータが対応を検討した。当初、本テーマに対応いただける研究者がなかなか見つからなかったが、日本大学 生物資源学部 m生命農学科の大澤啓志教授にお話を伺っていただけることとなった。大澤教授は、造園緑地学、景観生態学、農村計画学を専門とされている。岡田社長との面談を実施した結果、順化、非順化の差異を明らかにするための共同研究を実施することとなった。


■ 研究の実施から成果の創出へ
 本テーマへは様々なアプローチが考えられるが、できるだけ現場で、簡単な計測によって順化、非順化の差異がわかる方法を確立することが望ましいと思われた。検討の結果、順化を行うことにより生じる形質(生物の持つ性質や特徴のこと)の変化を把握するための研究を進めることとし、グリーニアン社で使用する植物を栽培している深谷の農場と、大澤教授の研究室のある神奈川県藤沢市でそれぞれ苗を生育し、葉の厚さ、スパット値(葉緑素の量)、及び気孔伝導度(二酸化炭素が葉の気孔を通る通りやすさ)を調べることとした。その結果、順化を行った葉の方が、厚みは厚く、スパット値は高く、気孔伝導度は高くなる傾向がみられた。
 本検討で用いた装置は、いずれも以下の写真に示すように小型で現場での測定が可能なものであるので、実用性も十分にあると思われ、現場でより簡単に順化、非順化を明らかにする指標としての適用可能性が示された。
 グリーニアン社では今後も本方法の高度化を進めるため、大澤教授との共同研究を続けていく予定である。

・暑さ測定器
・葉緑素計(葉緑素の量を測定)
・リーフポロメーター(気孔伝導度を測定)